空挺ドラゴンズに登場する「龍の尾の身のロティ・アン・クルート」に合わせるワインをソムリエ的視点でご紹介します。
今回セレクトしたのが、フランスを代表する「ボルドーの赤ワイン」。
その理由を作品の背景と料理のルーツをたどりながら解説していきます。
空挺ドラゴンズとは 舞台背景
空挺ドラゴンズとは龍と呼ばれる生物が棲息する世界で、龍を狩って生計を立てる「龍捕り」たちを描いたファンタジーです。
物語の主人公たちは、飛行船に乗って捕獲した龍を加工して売りさばくことを生業としています。
龍は「宝の山」と呼ばれ、一頭捕獲するだけでかなりのお金になるようです。
捕獲した龍は食肉や油はもちろん、内臓を薬の原料にしたり骨や筋を工芸品にしたりと余すことなく使うことができます。
劇中では龍のお肉をつかった料理が印象的に描かています。
公式レシピと作り方
コミックには公式レシピが掲載されていますので今回はそちらから引用しました。
劇中ではパーティー中の料理対決の一品として登場します。
古き良き料理マンガのオマージュもされていて楽しい場面ですね。
材料
材料[4人分]
◆龍の尾の身肉:650g ◆塩:適量 ◆胡椒:適量
◆バター:40g ◆エシャロット:2個 ◆ニンニク:1片
◆マッシュルーム(複数の種類があるとなお良い):200g
◆マディラワイン(もしくはブランデー):大さじ1
◆油:大さじ2 ◆赤ワイン:250cc
◆フォンドヴォー:50cc ◆小麦粉:少々
◆パイ生地:2枚 ◆溶き卵:1個分
龍の尾の身肉の代わりには牛のフィレ肉などを使うとよいでしょう。
フォンドボーとはお肉で取っただし汁のことです。
作り方
1.オーブンを220度に予熟する。塩胡椒で肉に下味をつける。2.鍋にバターを入れて溶かし、細かく刻んだエシャロットとニンニクを加え、2〜3分加熱する。
3.細かく刻んだマッシュルームを加え、水分が飛ぶまで4〜5分混ぜ続け、マディラワインを加え沸騰したら火から下ろす。
4.フライパンに油大さじ2を入れて熱し、肉を入れて全体に焼き色がつくまで加熱する。
5.肉をトレイに移し、オーブンで10分焼いたら一度取り出し脇に置いて冷す。6.肉を焼いた後のフライパンに、赤ワインを入れて中火にし、木べら等で肉の旨味が付いた焦げをこそげ落としながら1/5程度になるまで煮詰める。
7.ソースパンなどに濾し器でこしながら移し、フォンドヴォーを加え、とろみが出るまでさらに煮詰める。
8.塩胡椒で味を調える。
9.台に小麦粉を振り、パイ生地1枚を肉の表面より縦横5cmほど大きい長方形に延ばす。フォークで全体に穴を空け、オーブンに入れてこんがり焼けるまで12〜15分焼いたら取り出す。
10.③のマッシュルームの1/3を焼いたバイ生地に広げ、肉をのせて残りのマッシュルームをその上に広げる。
焼いたパイ生地の縁に溶き卵を薄く塗り、もう1枚の生のパイ生地を延ばして肉を覆い、焼いたパイ生地の下に織り込んで指で押さえて閉じる。
11.生のパイ生地に残りの溶き卵を塗り、何箇所か蒸気の抜け道となる切り込みを入れる。オーブンに入れて30〜45分ほど焼き、取り出して10分冷ます。
12.切り分けて、赤ワインリースを添えたらできあがり。
パイで包むことで外はこんがり香ばしいのに、中は程よくミディアムレアという焼き加減になりますね。
マッシュルームなどのキノコは、よりお肉の味を引き立たせます。
手の込んだ料理なので、実際に作るとなると少し大変ですが、作中には調理の様子が見事に描かれているので是非作品を読んでみてください。
ロティ・アン・クルート
「ロティ」は、「ロースト」を意味するフランス語。
「アン・クルート」は「パイで包んだもの」という意味です。
「ロティ・アン・クルート」は「ロースト肉のパイ包み」というわけですね。
フランスでは「パテ・アン・クルート」といってパテをパイで包んだものもよく作られるよ。
イギリスには「ビーフ・ウェリントン」と呼ばれる同じ料理があります。
基本的には牛フィレ肉をパテやマッシュルームペーストなどと一緒にパイ生地で巻いてオーブンで焼き上げたパイ料理ですね。
オーブンを使った調理法においては、フランスとイギリスは互いに影響を与え合ってるところもあるので、このように同じような料理があるのも不思議ではないんです。
イギリスにはたくさんのパイ料理があるのですが、中でもこのビーフ・ウェリントンは、「パイの王様」などとも言われるちょっと特別なパイ料理。
劇中では「クラッシックで祝宴のメインにはぴったり」と表現されています。
オーブンを使った料理は、設備がないと作れないため、ちょっと贅沢な料理としてハレの日に食べられるというわけですね。
パイの役割
ローストビーフに代表されるように、イギリスでは塊肉をオーブンで調理する方法が盛んで、パイ料理もその一つです。
イギリスではその昔、パイ生地を“中身を入れる器”として使っていました。
現在のような、オーブン用の型や皿がなかったので、パイがその役割をしていたというわけです。
パイ生地を使うことで、肉や果物の持ち味を逃さないように調理でき、保存もしやすかったんですね。
パイ生地を容器として使う発想は、パンを皿の代わりに使っていたトレンチャーに通じるところもありますね。
トレンチャーについてはこちら↓
合わせるワインはフランスのボルドーワイン
「龍の尾の身のロティ・アン・クルート」におすすめするのが、「ボルドーの赤ワイン」です!
今回はフランスとイギリス双方の影響を受けた料理ということもあり、その架け橋としてもボルドーワインをセレクトしました。
実はボルドーワインとイギリスとの関係は深く、ボルドーは過去にイギリスの支配下にあったことで、ボルドーワインは主にイギリスへ輸出されたいたんです。
ボルドーワインはシャトーごとに1級から5級までの格付けがあり、1級に選ばれたシャトーは5大シャトーとして君臨しています。
その品質とブランド力は、「ワインはボルドーにはじまり、ボルドーにおわる」
などと表現されることもあるほどで、投資の対象としても取引されています。
おすすめはセカンドラベル
格付けにより確かな品質を保ち続けているボルドーワイン。
その中でもおすすめなのがセカンドラベルと呼ばれるワインです!
ボルドー各々のシャトーでは、最上級のブドウを使用して”シャトーの顔” とも言うべき「ファーストラベル」のワインが生産されています。
「セカンドラベル」はそれに使用されないブドウなどを使って造られる第二のワインとして作られたものです。
只、それがセカンドラベルであっても、そのシャトーのワイン作りにおける情熱やポリシーは変わりません。
むしろ品質は折り紙つきで、値段はファーストラベルよりかなりリーズナブルになります。
たとえ第二のワインであってもそのシャトーのワインの底力を感じ取る事ができるでしょう!
ファーストと区別するため少し名前が違うよ。
ボルドーの赤ワインはタンニンと酸のバランスがよく、しっかりとしたコクもあるのでのパイで包んだロースト肉との相性は抜群です。
さっくりとしたパイで包まれたジューシーなお肉を、力強いボルドーワインがさらに引き立ててくれますよ!
まとめ
空挺ドラゴンズに登場する「龍の尾の身のロティ・アン・クルート」にボルドーの赤ワインをセレクトしました。
ボルドーワインはイギリスへ輸出される事で品質は高まり、世界に誇れるブランド力を身につけました。
イギリスの貴族たちが優先的に飲んでいたこともあり、ボルドーワインが差別化され有名になっていったんですね。
値の張るものもありますが、格付けによってはファーストラベルの物でも手が届くものがあると思いますので、予算に合わせて選ぶのも良いでしょう。
ハートのデザインが有名な銘柄もありますので、是非大切な人と一緒に楽しんでください。
有名シャトーのものならお祝い事にも花を添えてくれますね。
それでは、「皆様によき風が吹かんことを、乾杯!」
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