空挺ドラゴンズに登場する「龍の尾身ステーキサンド」に合わせるワインをソムリエ的視点でご紹介します。
今回セレクトしたのが、イタリアを代表する赤ワイン「キャンティ」。
その理由を作品の背景と料理のルーツをたどりながら解説していきます。
空挺ドラゴンズとは 舞台背景
空挺ドラゴンズとは龍と呼ばれる生物が棲息する世界で、龍を狩って生計を立てる「龍捕り」たちを描いたファンタジーです。
物語の主人公たちは、飛行船に乗って捕獲した龍を加工して売りさばくことを生業としています。
龍は「宝の山」と呼ばれ、一頭捕獲するだけでかなりのお金になるようです。
捕獲した龍は食肉や油はもちろん、内臓を薬の原料にしたり骨や筋を工芸品にしたりと余すことなく使うことができます。
劇中では龍のお肉をつかった料理が印象的に描かています。
龍の尾身ステーキサンド
劇中に登場するステーキサンドは、新鮮な龍肉のステーキを硬くなったパンで挟んだとてもシンプルな料理です。
ステーキというだけあって牛肉のような味わいのようで、アフタヌーンの公式サイトでも牛肉が代用して使われていますね。
材料(1個分)
牛肉(「龍の尾身」の代用):250g
岩塩:少々
胡椒:お好みで
牛脂(「龍の皮の脂」の代用):適量
ブランデー:適量
好みのパン:2スライス
作り方
1
アフタヌーンサイト
岩塩(お好みで胡椒も)を肉の両面に振り、熱した鉄板に脂をひく。
2
鉄板に肉をのせ、強火で1分、弱火でもう1分焼く。
3
肉を返し、強火で30秒、弱火で1分半焼く。
4
ブランデーをひとたらししてアルコールを飛ばす。
5
焼き上がった肉をスライスし、片面に焼き色をつけたパンに挟んだら出来上がり。
劇中では主人公のミカが作っているのですが、カチカチのパンを一度水に浸すなどの芸の細かい描写がされていますね。
材料⓵龍の尾身
ステーキに使われる肉には龍の尾身のつけ根部分が使われています。
龍肉にも部位によって味の違いや特徴があり、龍の尾身の部分は赤身と脂身のバランスの良い高級部位とされています。
適度にサシ(脂身)の入った赤身肉は酸化しやすく保存が難しいので、その場でサッと焼いて食べるステーキにはうってつけの部位だったのでしょう。
ミカの龍肉への目利きの鋭さと、美味しく食べようという愛情が表現された料理といえますね。
材料②パン・ド・カンパーニュ
サンドに使うためのパンはカチカチに硬くなったパンが使われています。
丸く大きな形をしたこのパンは、パン・ド・カンパーニュ と呼ばれる食事パンですね。
カンパーニュとは「田舎」のことなので、パン・ド・カンパーニュとは「田舎パン」のことです。
素朴な味わいと外観をした食事用のパンで、ヨーロッパの各地方では古くから愛されてきました。
天然の酵母を使って発酵させるため、独特の酸味と香りを持っています。
日にちが経つとカチカチに硬くなるのですが、保存しやすいパンなので、一度飛び立つと中々地上に降りることのできない捕龍船で日常的に食べられていたのでしょう。
硬いパンをお皿代わり トレンチャー
しかしなぜミカはカチカチに硬くなったパンをわざわざ使ったのでしょう?
実は中世ヨーロッパの人々はトレンチャーと呼ばれるカチカチに硬くなったパンをお皿代わりにして肉料理などを載せて食べていました。
当時の食事ではまだフォークが使われておらず、食事は基本的に手づかみで食べられていたんです。
中世ヨーロッパでは食器は汚れたものだと考えられていため、代わりに平たいパンを使っていたんですね。
食事をしているうちに料理の汁気を吸ってパンは柔らかくなってくるので、最後に残ったソースを絡めて食べることも出来たようです。
オープンサンドの原型ですね
当然、パンに食材をはさんで食べる、サンドイッチのような食べ方もされていたでしょう。
ミカがカチカチに硬くなったパンを使ったのも、そんな歴史的背景が盛り込まれているのではないかと思うとワクワクしてきますね。
ただ単に余ったパンを使ったということかもしれませんが(笑)
合わせるワインはイタリア代表の赤ワイン「キャンティ」
ワイルドな龍肉を使った「龍の尾身ステーキサンド」 。
この料理にお勧めするのが、イタリアのトスカーナ州で作られる赤ワイン「キャンティ」です!
キャンティは、サンジョヴェーゼというブドウから作られるイタリア代表の赤ワイン。
酸のみずみずしいワインなのでどんな食事とも合わせやすく、龍獲りのようにガブガブ飲むとことができます。
主張しすぎない味わいがこのワインの最大の魅力といってもいいでしょう。
生き生きとしたワインの酸が肉の脂分を洗い流しながら、後に柔らかな余韻を残してくれます。
クリスピーなパンとの相性も抜群で、素朴な小麦の味わいはワインの味わいをさらに引き出してくれるでしょう。
パンとお肉、双方の味わいを楽しむのにうってつけのワインといえます。
キャンティはに劇中でも時折出てくるような、藁で編んだ「フィアスコ」というボトルの物もありますよ。
この藁を編める職人は年々減っており、その特徴的な形から輸送費もかさむので、日本への輸入も一時に比べ少なくなりました。
そのため「同じ作り手」の「同じ中身」のキャンティであっても、少し割高になってしまいます。
ただ、雰囲気は抜群なのでフィアスコボトルのキャンティを選ぶのも楽しいと思います!
ボトルから直接飲めば龍獲りの気分になれるでしょう。
持ち手のついたワイングラスでなくコップのようなグラスで飲むのもいいですね!
まとめ
空挺ドラゴンズに登場する「龍の尾身ステーキサンド」にイタリアの「キャンティ」をセレクトしました。
キャンティは食事のためのワインともいわれていて、気軽に楽しめるのがその魅力です。
素朴ながら飽きのこない味わいは、長年愛されていますね。
まさに水代わりのワインといったところでしょう。
作中の後半に登場するシンプルなステーキであれば、格上の「 キャンティ・クラシコ 」もお勧めです!
伝統的なエリアのみで造られた、品質の良いキャンティをキャンティ・クラシコと呼ぶのですが、そのおいしさは折り紙付きですよ。
地元トスカーナでは、キアーナ牛というブランド牛で作られるステーキ「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」と「キャンティ・クラシコ」を合わせるのが鉄板の組み合わせです。
分厚いステーキも酸味と甘味のバランスがとれた上質なキャンティ・クラシコならぺろりと食べれてしまうのです。
是非、普通のキャンティと比べて楽しんでみてください。
では、よき風に乾杯!
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