ルパン三世5期に登場した「そば粉のガレット」に合うワインをソムリエがご紹介します。
今回セレクトしたのが、 「フランス・ロワール地方のミュスカデ」。
その理由を料理のルーツをたどりながら解説していきます。
舞台背景
パート5ではルパン三世の祖父ルパン一世が活躍した国フランスが主な舞台になっています。
作中ではおなじみのカップヌードルやジビエ、カツレツ、チーズフォンデュといった食事のシーンがたくさん出てきますね。
ルパン一味はアパートを根城にしており、1階にあるカフェで食事をとります。
そのカフェの名物として登場するのが「そば粉のガレット」。
生地に卵とハム、チーズがのせられたシンプルなガレットが印象的ですね。
五ェ門もそのカフェでガレットと食べて、「美味しかった」といっているので味の評判は良いようです。
ブルターニュのそば粉のガレット
ガレットはフランスの北西部、ブルターニュ地方の郷土料理で「円く薄いもの」を意味します。
フランス語のガレ(galet)には「小石」という意味があり、それが派生して丸く平たい料理やパンケーキなどを総称して「ガレット」と呼ぶようになったようです。
ブルターニュ地方は日照時間が短いことから土地が痩せ、小麦の生産に向いていない土地でした。
そこで代わりに栽培され始めたのがそば粉だったというわけですね。
そば粉の生地を薄く大きく焼いて、お好みの具をのせて食べるガレットは地元の人たちにも人気の料理で、街にはクレープリーと呼ばれる専門店がたくさんあります。
日本では一般的にガレットといえばそば粉のクレープがイメージされますが、「ガレット・ブルトンヌ」と呼ばれる焼き菓子や、「ジャガイモのガレット」なども「ガレット」という名前で呼ばれていますね。
どちらもやはり円形の丸い形をしています。
ガレット・コンプレ
劇中で出てきたものは卵、ハム、チーズをのせた「ガレット・コンプレ」と呼ばれるガレットです。
「コンプレ=完全な」という言葉の通り、「栄養的にもボリューム的にも完全なスタイルのガレット」を意味するいわば定番のガレットです。
日本でも白ごはんに目玉焼きとベーコンをのせたものを完全栄養食とい言ったりしてますのでそれに近いものかと思います。
チーズはグリュイエールなどのハード系のチーズが使われることが多いですね。
劇中で登場したものにはキノコもトッピングされています。
ガレットが評判ということもあり、アジトの一階にあるカフェの主人はブルターニュ出身だったのかもしれませんね。
合わせるワインはロワールのミュスカデ
ブルターニュ地方の郷土料理である「ガレット・コンプレ」。
シンプルな味わいが奥深いこの料理には、ブルターニュの南に位置するロワールの「ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ」をお勧めしたいと思います。
ミュスカデはロワール地方を代表する白ワイン用のぶどう品種。
「セーヴル・エ・メーヌ」はロワール河の支流のセーヴルとメーヌという川の名前だよ。
マスクメロンに似た香りを持つブルゴーニュ地方からやってきた品種ということで「ムロン・ド・ブルゴーニュ」とも呼ばれています。
青りんごやハーブなどの香りがあり、フレッシュで清涼感のある味わいはハムやチーズをのせたガレットに良く合いますよ。
伝統製法のシュール・リー
少し専門的になりますが、ロワール地方のミュスカデは「シュール・リー」という伝統的な製法で造られることが多いです。
シュール・リーは「澱の上」という意味で、ワインのアルコール発酵によって生じる酵母(澱)をワインの中にそのまま残し、ワインと酵母を触れさせたままにしておくものです。
澱とともに熟成させる事によって日本酒を思わせるような酵母の旨味やまろやかな質感ががワインに加わります。
リンゴのお酒シードル
ブルターニュ地方ではリンゴの栽培も盛んで、リンゴのお酒「シードル」もガレットと合わせて定番で飲まれるお酒です。
シードルはリンゴを原料にしたさわやかな発泡酒で、ワインよりもアルコール度数が低く飲みやすいのが特徴です。
ビールのかわりにもなるので最近では日本でも女性を中心に人気が高まっており、スーパーやコンビニでもよくみかけますね。
ブドウで造られたものではないので厳密にはワインではないのですが、「リンゴのスパークリングワイン」などと表記されて売られてる場合もあります。
ちなみに「シードル」は「サイダー」の語源でもありますよ。
まとめ
本場のガレットをお家で食べる事が有れば、是非ブルターニュからほど近いロワールのミュスカデを合わせてみてください。
爽やかな白ワインとそばの香りが香ばしいガレットとの相性はバッチリですよ。
もちろんリンゴで作られたお酒シードルを合わせるのもおすすめです。
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